ウェンガー血統について

ここで、アーミーナイフを理解するには避けて通れない「ウェンガー血統」というものについて触れておきたい。

「ウェンガー」というのは、元々はビクトリノックスと同等の、スイス軍のナイフの半数を納入していたメーカーで、やはりアーミーナイフを世界中で販売していた。
スイス製のアーミーナイフといえば、元々はビクトリノックスとウェンガーの2社だったのだ。 しかしウェンガーは経営危機に陥ってしまい、2005年にビクトリノックス傘下となり、2013年にはそのロゴが刻まれることは無くなってしまった。
このあたりの経緯については、こちらで詳しく述べているが、とにかくウェンガーはビクトリノックスに吸収されてしまったのだ。

元々が対等レベルの別会社だったので、ツール等もビクトリノックス製と違いがあったものの、似たモデルはビクトリノックス本流を残してウェンガーのものは廃止するというラインアップの整理をしつつ、残すモデルについても共有が可能なツールは共有を進め、今に至っている。

しかし、確かに経営ではやらかしたものの、専門性の高いモデルが多かったこともあって、ウェンガーには世界中に非常に多くのファンがおり、在りし日にはツールに拘りの強い人ほどウェンガーを好んでいた。
ウェンガー血統のツールの多くは、ビクトリノックスに勝るとも劣らない程に優秀で、特にハサミなどは断然ウェンガーの方が優れており、ビクトリノックスのモデルでは満足できない人も多いのだ。

Wenger Foretster

そうした疎かにできない需要に応えるため、ビクトリノックスと刻まれてはいるものの、いまだに事実上ウェンガーなモデル(ウェンガー血統)がラインナップに残っている。

吸収したビクトリノックスとしてもこうした状況は痛し痒しらしく、自分たちの本流のモデルを前面に押し出し、ウェンガー血統のモデルは隠し気味に展開しつつ、年々その規模を縮小しつつあるものの、なかなか廃止は出来ないらしい。

とにかくウェンガー血統のモデルは、目立たないようにされている上に値段が高いものの、むしろ本流より優秀だ。
ミディアムサイズなら、元々ウェンガーの方が日本人の手に馴染む大きさと言われており、これは女性であれば余計になので、是非とも候補に入れて欲しい。

ともあれウェンガーは、アーミーナイフを語るには避けて通ることは出来ない大きな存在なので、興味のある人は是非「ウェンガーを知ろう」、「ビクトリノックス vs ウェンガー」を読んで頂きたい。

以下に、ざっくりとウェンガー血統の現行モデルを記しておく。

ウェンガー血統の現行モデル(2023年11月時点)

  • スモールサイズの全長65mmのモデル。
    「エグゼクティブ」または「Wenger」と付くモデル、ネイルクリップが付く全モデル。
  • ミディアムサイズの全長85mmのモデル。
    「エボリューション」と付く全モデルと「シガー」。
  • ラージサイズの全長130mmのモデル。
    「レンジャー」と付く全モデルと「ワインマスター」。

Evolution 17 wood

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